図書館でホットチョコレートを!
人文学部国際コミュニケーション講座助教授 太 田 聡
春休みの図書館で
今年の春休みは、かなりの時間を本学の図書館で過ごした。本や会議の資料等で年々手狭になっていく自分の研究室を抜け出して、気分転換がてら、たまには広い図書館で読みかけの論文を読もうと思ったからである。人で込み合っている図書館は、どうしても気が散ってしまうのだが、春休み期間中の図書館は利用学生も少なく、結構集中できて、なかなか居心地がよい場所だった。迷惑セールス電話がかかってきて邪魔されることがないのもよい。ところが、自分の部屋にいる場合と違って、一つとても不便に感じることがあった。それは、館内で飲食できないことである。日頃、図書館を利用すると言っても、ちょっと検索をするとか、必要な本を探して借りたりコピーをしたりするだけなので、館内滞在時間はたいてい1時間以内である。そのため、飲食禁止という図書館の規則に、不便さを感じることなどまったく無かった。ところが、丸1日図書館で過ごしてみると、「館内飲食禁止」、「飲食物を持ち込まないで!」という張り紙がなんとうとましく思えたことか。「長時間図書館を利用することを禁ずる」と言われているような気さえした。疲れると甘いものが欲しくなる、という経験は多くの人にあると思うが、小生は、難しい論文を読んだり、なにかアイディアをひねり出そうとして、頭を酷使するときは、チョコレートやアイスクリームの類が無性に欲しくなる。だから図書館にも、鞄にチョコを忍ばせて行きたくて仕方がなかった。また、自分の部屋でならば、コーヒーやお茶をちびちび飲みながら、読んだり書いたりしたいものである。しかし、図書館での場合は、昼食後などにペットボトルを買っても持ち込めない――持ち込めば規則違反者になる――というのが、実に恨めしかった。喉が渇いたり、おやつが欲しくなれば、休息を兼ねて、館外の食堂や売店や自販機のあるところに行けばよいだけのことではないか、と思われるかもしれない。が、ちょっと喉を潤したり、ほんの一口甘いものが欲しいときに、いちいち館外に出なくてはならないのは、とても面倒であり、ペースも狂ってくる。しかも、外で買ったものは全部飲み干すか食べ尽くさないと、持ち込み禁止なので再入館ができない、というのはすこぶる不便・苦痛であった。さらに、館内では、飲食禁止の張り紙と並んで、「所持品にご注意!」、「席を離れる時は、貴重品を必ず身につけて下さい。」といった張り紙も目に付く。つまり、大変残念なことに、館内で盗難が多発していますと警告されているわけだから、高価なものなど持たない私も、休憩で席を離れるときは、財布だけでなく、一応荷物を全部デイパックに入れて持って出ていく。盗まれるような貴重品はなくても、金目のものがないかと物色されること自体が嫌だったからだ。ところがそうすると、戻って来たときに、せっかく朝一番にやって来て確保した一番端にあるお気に入りの1人掛けの席に、誰か他の人が座っているということもしばしばで、悔しい思いもした。
図書館の中のカフェ
昨夏、研究仲間のおかげで取れた科研費で、一夏をミシガン州立大学(MSU)で過ごす機会を得た。MSUで開かれていたアメリカ言語学会夏期講座と、同時に開かれていたいくつかの学会に出席するためであった。学内の学生寮に寝泊りしながら、欧米の超一流の言語学者達の集中講義を受講し、授業や研究発表のない時間帯はほとんど図書館で過ごす、(そして、ときどきサッカーとパーティーでリフレッシュ)というとても恵まれた夏休みだった。MSUのメイン・ライブラリーは、アメリカの大学の図書館にしては、それほど大きなものではなかった(下左側の写真が外観)。しかし、山口大学の図書館にはないものが備わっていて、私には大変ありがたかった。それは、図書館内のカフェである(下右側の写真の"Cyber Cafe")。難解な理論・最新の理論に悪戦苦闘しながら疲れ果てた私の脳みそは、このカフェのホットチョコレートやコーヒーとチョコチップクッキーにずいぶん癒された。わざわざ図書館の外のカフェまで行かなくても、図書館の中でお茶にすることができるのは、本当に嬉しかった。図書館に長く居るのがまったく苦にならず、むしろ、楽しみであった。図書館の中では、みな必死に勉強したり、最新の情報を収集したりで、静かだが張り詰めた戦いが行われている。なのに、このカフェの一角だけは、どこかゆったりとした贅沢な時間が流れていた。